【第2章】自由研削用といし⑤
第2節 研削といしの表示及び安全②
2.といしの安全
研削といしは刃物が高速(時速200kmを超える)で回転し、加工物を研削、研磨、切断等をするための工具です。
研削といしの取扱いを誤ると重大な災害につながります。また、といし自体は、使用中に常に摩滅したと粒が脱落し新しいと粒に入れ替わり飛び散っています。このため、誤操作はといしの破壊につながる危険があります。
また、「研削といしの取替え、又は取替え時の試運転の業務」は法令で「危険または有害な業務」として指定され、この業務を行うには「特別教育」の実施が必要とされています。
(1)最高使用周速度
といしは研削盤により回転させて使用しますが、最高使用周速度はといし毎に定められています。従って、使用に当たってはこの最高使用周速度を超えて使用してはいけません。
なお、最高使用周速度とは、研削といしが安全に使用できる最高限度の周速度を示しており、いかなる場合もこれを超えた速度で使用してはならないとされています。(安衛則第119条)
また、研削盤等構造規格(抄)(昭和46年告示第8号)には以下の規定があります。
第2章 研削といし等
(1~6条省略)
第7条(最高使用周速度)
研削といしは、最高使用周速度が定められているものでなければならない。
第8条(平形といし等の最高使用周速度)
研削といしのうち、平形といし、オフセット形といし、切断といしの最高使用周速度は、当該といしの作成に必要な結合剤により作成したモデルといしについて破壊回転試験を行って定めたものでなければならない。
周速度とは、外周部の一点が1秒間に運動する距離。毎秒何メートル(m/s)の単位で表示されます。
回転数とは、回転軸が1分間に回転する回数で、毎分何回転(min1又はrpm)の単位で表示されます。また研削盤には必ず無負荷時の回転数を表示しなければならないと決められています。
また、外径75mm以上のといしには、必ず最高使用周速度を表示しなければならないと決められています。
といしの最高使用周速度とといしの外径、およびといし軸の回転速度との関係は次の式のようになります。
周速度(m/s) ➡ 表示されているといしの最高使用周速度以下ならOK 【といしの外径(mm)×円周率(3.14)×回転数(min-1)÷60÷1000】 (1周当たりの距離×1分当たりの回転数を計算して総距離を出し、秒とmに換算すれば、実際の秒あたりの速度が求められる) |
回転数(min-1) ➡ 実機が次の回転数以下ならOK 【最高使用周速度(m/s)×60×1000÷(といしの外径(mm)×円周率(3.14) )】 (最高使用周速度での1分当たり上限距離を求め、mmに換算し、といし1回転分の長さ(mm)で割ると、回してよい回転数の上限が求められる) |
【周速度換算例-1】
普通速度のグラインダ(毎分7,000回転)に普通速度(最高使用周速度72m/s)のオフセットといし(180×6×22)を使用する。
グラインダは毎分回転数7,000回転
使用するといしは、直径180mm、最高使用周速度72m/sです。
このグラインダにといしを取付て使用した場合、実際のといしの周速度は180mm×3.14×7,000min-1÷60÷1000=65.9m/sとなります。
グラインダでのといしの周速度65.9m/s < 72m/s(といしの最高使用周速度)となり安全と言えます。
【周速度換算例-2】
高速度のグラインダ(毎分8,000回転)に普通速度(最高使用周速度72m/s)のオフセットといし(180×6×22)を使用する。
グラインダは毎分回転数8,000回転
使用するといしは、直径180mm、最高使用周速度72m/sです。
このグラインダにといしを取付て使用した場合、といしの周速度は180mm×3.14×8,000min-1÷60÷1000=75.36m/sとなります。
グラインダでのといしの周速度75.36m/s > 72m/s(といしの最高使用周速度)となり、このグラインダでは危険となり使用できません。
《対応》
グラインダの回転数とといしの最高使用周速度が適合しない場合
①→ 使用するといしを変更する
②→ といしを変えられない時は、回転数の低いグラインダに変更する
【演習問題2】
下図のグラインダAを使用し、研削といしBで作業を行なう場合、グラインダと研削といしは適正か、最高使用周速度は使用に支障がないかを検討して下さい。
●グラインダA | ●研削といし B | ||
使用といし形状寸法 | といし 形状寸法 | ||
回転数(min-1) | 最高使用周速度 |
①上の四角の中に数値を書き込んで下さい。
②グラインダAと研削といしBは適合しているか?(いずれかに〇)
1.適合している
2.適合していない
3.どちらとも判断できない
③グラインダAの周速度を計算します。(※円周率は3.14で計算)
使用するといしの外周長さに回転数を掛けると、1分間に進む距離が出ます。
それを、60秒で割ることで、1秒での進む距離(=周速度)がでます。
※外周長=直径×3.14です。
直径×3.14×回転数÷60秒÷1000=周速度(m)となります。
×3.14× ÷60÷1000 =
この数値が表示されている最高使用周速度より ければ安全です。
■研削といし回転数・周速度換算表 (単位:min-1)
周速度:m/s | |||||
---|---|---|---|---|---|
といし外 径:mm | 30 | 33 | 40 | 45 | 57 |
90 | 6,369 | 7,006 | 8,493 | 9,554 | 12,102 |
100 | 5,732 | 6,306 | 7,643 | 8,599 | 10,892 |
125 | 4,586 | 5,045 | 6,115 | 6,879 | 8,713 |
150 | 3,822 | 4,204 | 5,096 | 5,732 | 7,261 |
180 | 3,185 | 3,503 | 4,246 | 4,777 | 6,051 |
205 | 2,796 | 3,076 | 3,728 | 4,195 | 5,313 |
255 | 2,248 | 2,473 | 2,997 | 3,372 | 4,271 |
305 | 1,880 | 2,067 | 2,506 | 2,819 | 3,571 |
355 | 1,615 | 1,776 | 2,153 | 2,422 | 3,068 |
405 | 1,415 | 1,557 | 1,887 | 2,123 | 2,689 |
455 | 1,260 | 1,386 | 1,680 | 1,890 | 2,394 |
周速度:m/s | |||||
といし外 径:mm | 60 | 63 | 72 | 80 | 100 |
90 | 12,739 | 13,376 | 15,287 | 16,985 | 21,231 |
100 | 11,459 | 12,096 | 13,758 | 15,287 | 19,108 |
125 | 9,167 | 9,677 | 11,006 | 12,229 | 15,287 |
150 | 7,639 | 8,025 | 9,172 | 10,191 | 12,739 |
180 | 6,369 | 6,720 | 7,643 | 8,493 | 10,616 |
205 | 5,593 | 5,872 | 6,711 | 7,457 | 9,321 |
255 | 4,496 | 4,721 | 5,395 | 5,995 | 7,493 |
305 | 3,759 | 3,947 | 4,511 | 5,012 | 6,265 |
355 | 3,230 | 3,391 | 3,875 | 4,306 | 5,383 |
405 | 2,831 | 2,972 | 3,397 | 3,774 | 4,718 |
455 | 2,520 | 2,646 | 3,024 | 3,360 | 4,200 |
例)外径 100mmで 72m/s ➡ 13,758 回転までの研削盤なら取り付け可能
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