【第1章】第3節 作業方法の決定及び労働者の配置 2
第3節 作業方法の決定及び労働者の配置②
(2)労働者の配置
「適正配置」と呼ばれているものです。職長が作業員に仕事を割り振る場合、作業の内容を確認し、それに見合う能力を有する作業員を配置することです。作業の内容とは、工事の難易度、施工環境や作業条件(資格や経験、熟練度など)、工事の種類や形態・内容、工期などであり、作業員については、工事に見合う資格、技能、知識、業務歴、年齢、体力などの把握をしなければいけません。
なお、適正配置を行なうに当たって職長は、「適正配置」の意味を十分理解していることや配置予定の作業員に不安や不満が発生しないか、共同作業で「うまがあわない」ものの組合せとなっていないか、などに留意することも大事な職務となります。
1.高年齢作業員の身体的特性
視覚の機能低下
① 近くが見えにくい
② 薄暗い場所などへの目の反応が鈍くなる
③ 文字などがぼやけたりして良く見えない
④ 細かいものが見えにくくなる
⑤ 明るいとまぶしさを感じる
⑥ 光源を見た時一時的にものが見えなくなる
高年齢作業員への照度は、若年者(20歳基準)の1.4 倍から2.5 倍必要と言われています(「オフィス照明基準」(照明学会編 1992 年))。
聴覚の機能低下
高齢になると聞き取りにくくなると言われますが、そのひとつは可聴距離が短くなる現象や、高い周波数(4kHz(キロヘルツ))が聞き取りにくくなる(40dBの低下)、ひずんだ音声や雑音にうずもれた音声を聞きわけにくくなるなどの症状が出ます。
身体平衡感覚の低下
安定した姿勢が保てることを“身体の平衡機能”といいます。加齢により姿勢のバランスの持続時間が短くなる、いわゆる身体の平衡機能の低下がでてきます。これにより「墜落」「転落」「転倒」などの災害を引き起こす可能性が高くなります。
この身体平衡機能を調べるため一般的に行われる方法として、「閉眼片足立ち」があります。男性は20歳頃をピークに、加齢により著しく低下すると言われています。トレーニングにより改善が見られるとの報告もあります。
筋力の低下
体の中で最も使用されるのが筋肉ですが、筋肉の中でも特に握力・背筋の力・脚力が加齢により衰える傾向があります。
反射的動作
危険と思った瞬間にその場を移動できる敏捷性が低下し、危険反応に素早く対応できなくなります。このことは反応時間にも表れてきます。
身体の柔軟性
加齢化により身体が、いわゆる固くなるようになります。そのために、床にある物を取り上げるのに不安定となったり、時間がかかるようになります。また、ちょっとした動き(ひねりや曲げ)でも、腰を支えている筋肉を傷める(いわゆるギックリ腰の一種)ことがあります。
回復力の衰え
若年層は疲労があっても身体的な回復が早いのですが、高齢者は身体の回復に時間がかかります。従って、長時間の業務は作業能率も下がることとなります。
高年齢者の身体的等特性に関する調査結果として、やや古いが有名な資料があります(上の図)。これは、若年者を基準(100)として、高年齢者の各種機能がどのくらい低下しているかを示したものです。特に、図の囲ったところが、若年者に比し機能低下が顕著であり、かつ作業との関連性が強いところです。
高年齢作業員の能力・適性面からの長所と短所
高年齢作業員の安全衛生の確保について、単に災害事故防止のための設備・機械の確保や安全衛生教育だけでは災害・事故防止を担保できません。
高年齢者の労働能力が加齢とともにすべてで低下するわけではなく、また、個人差が大きいこともあり年齢のみで判断するのは危険です。一般に、高年齢作業員は長年培ってきた分野の知識・経験という蓄積があり、その蓄積は自分が専門とする分野を含め仕事全体に対する状況判断に優れていると理解すべきです。
高年齢作業員との接し方(向き合い方)
高年齢作業員は過去の実績を貴重な財産として持ちながら仕事をしています。職長等は新人当時を思い起こし、先輩の教育、指導、指示を受けて今の自分があるという感謝の気持ちや、自分より人生経験が豊かであることへの尊敬の念をもって接するなどきめ細かい気配りが大切です。
高年齢作業員が、職長等のもとで組んだチームで力を発揮する⇒やる気を起こさせる⇒仕事に生きがいを感じとれるように意識して接することが大切です。
なお、コニュニケーションの基本は
① 高年齢作業員の話を聞くこと
② 質問をして相手が思っていることを引き出すことにつきます。
したがって、挨拶に限らず健康のことや仕事の進み具合、悩み事など、職長からの声掛けを意識するとともに、YES/NOで終わらない質問をすることを心掛けます。
2.適正配置に必要な資格と教育等
1)法令による安全衛生教育(労働安全衛生法第59条)
① 事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。(雇入時教育)
② 前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。
(作業変更時教育)←新規入場者教育が該当
③ 危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者を就かせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行わなければならない。(特別教育)
■自由研削といしの交換と試運転の業務等の事業者責任で行う安全衛生教育等
2)就業制限(労働安全衛生法第61条に定める資格)
① クレーンの運転その他の業務で免許、技能講習を修了した資格を有する者でなければ就業禁止
② 当該業務に就くことができる者以外は当該業務の禁止
③ 当該業務に従事するときは、これらに係わる免許証、その他資格を証する書面を携帯しなければならない。
■車両系建設機械技能講習、玉掛技能講習等の国家資格
3)行政指導による安全衛生教育
■有機溶剤中毒、振動障害、騒音障害、熱中症、丸ノコ作業従事者教育等
4)健康診断(労働安全衛生法第66条)
① 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。(雇い入れ時健康診断、定期健康診断)
② 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。(特殊健康診断)
■常時騒音、振動、有機溶剤、アスベスト等の有害業務に就く者が対象
※健康診断の結果が「要再検査」等の所見付きの場合も速やかに対応する
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