災害事例③
【災害事例3】
携帯用グラインダのといしが割れて当たり死亡
【発生状況】
この災害は、鉄骨造りの建物の新築工事において、天井ボードの切断作業を行なっているときに発生したものです。
当日、午前8時頃、下請業者の職長Aと作業員2人の計3人が現場に入り、前日までに終了した内装工事の後片付けをしていた。その後、12時前に、元請担当者Bから天井に点検口を設置するよう指示されたAは、点検口の設置は自分ひとりで行うこととして、午後1時から作業を始めた。このとき、他の作業員2人には午前中に行っていた片付け作業を続けるように指示を行った。
作業は、点検口を設置する天井の下に置いた脚立と積み重ねた床材にAが乗り、可搬式グラインダで天井に切れ込みを入れて開口部を設ける方法で行われた。作業を始めて30分ほど経過したとき、グラインダの研削といしが天井ボード裏の金属製下地に接触して割れ、飛来したといしの破片が作業者に当たり被災した。
【詳細状況】
被災者Aは、防護面などの保護具を使用していなかった。
Aが使用していた可搬式グラインダは、といしの覆いが無く、割れたといしの飛来を防止することが出来なかった。また、といしがグラインダ性能に適合しておらず、最高使用周速度を超えて使用していた。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられます。
1.作業個所の状況を確認しないまま、切断作業を行なったこと。
Aは、切断する天井ボードの裏側の状況を確認しないまま作業を開始し、ボード裏の金属製下地材に気付かず、これにといしが接触して割れ、飛散したものである。また、作業指示を出したBも天井ボードの裏の状況について説明していなかった。
2.研削といしの覆いがない可搬式グラインダを使用していたこと。
覆いがなかったため、飛散したといしを防ぐことができなかった。
3.グラインダに適合しないといしを使用していたこと。
グラインダに適しないといしを使用していたため、といしの最高使用周速度を超えて使用した結果、軽く接触しただけでもといしが耐えられる以上の力が加わり飛散した。
4.保護具を使用していなかったこと。
作業者Aが防護面を使用していなかったため、負傷の程度が大きくなった。
【対策】
同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1.作業開始前に現場の状況を十分に確認し、作業に適した工具を使用すること。作業を始めるに当たっては、作業個所の状況を見えない部分も含めて確認し、状況に適した工具を選定して作業する。また、作業指示者もあらかじめ状況を確認して、指示の際に確認した状況を説明する。
2.現場に持ち込む工具は、点検を行い、基準に合っていないものは使用しないこと。現場で使用する工具類は、あらかじめ点検を行い、覆いが欠けている等の不具合があるものは現場に持ち込まないようにする。
3.グラインダに適合した研削といしを使用すること。研削といしにはそれぞれ最高使用周速度が決められている。この最高使用周速度を超える回転数で使用すると、といしが割れる恐れがある。このため、グラインダの回転数を確認し、適合している最高使用周速度の研削といしを使用することが必要である。
4.必要な保護具を使用させること。
作業を計画するときには、予想される労働災害を防止するために必要な保護具を決め、作業者には作業中必ず使用させる。
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