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第4章 安全な作業方法に関する知識①

(1)災害事例研究

① 角材を加工中、携帯用丸のこ盤が反発して作業者に当たり死亡

【発生状況】

この災害は、河川の護岸工事現場で発生したものである。

災害発生当日、作業者Aは、携帯用丸のこ盤を使用して角材(長さ50cm、縦と横ともに5cm)を加工して測量用の杭を作るよう職長Bから指示された。

Aは、資材置き場から材料の角材を十数本持ってきて、携帯用丸のこ盤を使用して加工作業を始めた。Aが丸のこ盤と角材を手に持って、作業していたところ、携帯用丸のこ盤が反発し、はずみで丸のこ盤の刃がAに当たった。Aは、病院に搬送されたが、死亡した。

Aが使用していた携帯用丸のこ盤は、元々取り付けられていた安全カバーの金具が変形していたため、安全カバーが正常に作動せず、刃が剥き出しのままであった。また、この携帯用丸のこ盤は、管理責任者が定められておらず、点検や整備も行われていなかった。

Bは、Aに作業を指示した際、安全な作業方法について具体的に示していなかった。さらに、この事業場では、作業者に対して、携帯用丸のこ盤の取扱い等についての安全教育を実施していなかった。


【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 携帯用丸のこ盤の安全カバーが正常に作動せず、刃が剥き出しの状態で使用したこと
2 携帯用丸のこ盤と角材を手に持って、不安定な状態で作業したこと
3 Aに対する作業方法の指示が不明確であったこと
4 Aに対して、携帯用丸のこ盤の取扱い等についての安全教育を実施していなかったこと


【再発防止対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 携帯用丸のこ盤は、管理責任者を定めて、点検し、安全カバー等に不良があれば直ちに修理して、常に良好な状態に整備しておく。

2 携帯用丸のこ盤を使用する際は、角材等の切断する材料を固定した上で、携帯用丸のこ盤をしっかりと保持して、使用する。

3 臨時の作業を指示する際は、安全な作業方法を具体的に示すようにする。さらに、作業者の経験や能力に応じた指導を行うことも重要である。

4 携帯用丸のこ盤を取り扱う作業者に安全教育を実施すること
携帯用丸のこ盤を使用する作業者に、その危険性、安全カバー等の安全装置の機能、安全な作業方法等についての教育を実施する。


② 木工用丸のこ盤でアルミ板を切断中、のこ刃に接触し死亡

【発生状況】

この災害は、自動車の修理工場において、建設機械の部品であるアルミニウム製縞板(表面に連続した滑り止め用の突起を付けた板)を木工用の携帯用丸のこ盤で切断しているときに発生したものである。

災害発生当日、作業者Aは、工場長Bより建設機械のバッテリー用カバー製作を1人で行うよう指示を受けた。作業内容は、すでに切断され山型に成型加工されたアルミニウム製縞板(430mm×840mm、厚さ2.5mm)を2枚に切断するものであった。そこで、Aは万力にアルミ板を固定し、携帯用の木材加工用丸のこ盤(のこ刃の外径190mm)でアルミ板を切断していたところ誤ってのこ刃に接触し被災した。近くにいたBがすぐに救急車を呼んで病院に搬送したが、数時間後に死亡した。

Bは、作業の前に適切な作業方法の検討を行った上で作業計画を定めることを行っておらず、また、Aに対して安全な作業を行うための指示もしていなかった。また、切断に使用した携帯用丸のこ盤は木工用のものであり、設置されている「刃の接触予防装置」の可動式覆いが機能していなかった。

さらに、Bは作業者に対する安全衛生教育も行っていなかった。


【原因】

この災害の原因としては、次のことが考えられる。

1 Aが指示された作業は、アルミニウム製縞板を2つに切断する単純なものではあったが、木工用の丸のこ盤を使用することや、山型に曲げられていたアルミ板の作業台への固定が困難である等、危険が予見される作業であったにもかかわらず、工場長Bは、作業の前に適切な作業方法の検討を行ったうえで作業計画を定め、作業者に対して安全な作業を行うための指示を行うことを怠っていた。

2 Aは、切断に使用した携帯用の丸のこ盤によって被災したが、この丸のこ盤は木工用でありアルミ板の切断には不適切であった。また、接触予防装置は取り付けられてはいたものの、刃の覆いを自動的に引き戻すためのスプリングがはずれており、接触予防装置として機能していなかった。

3 当該事業場では、安全作業の基本に関する教育、危険な機械の安全装置の機能や保守点検等についての安全衛生教育を行っていなかった。

【再発防止対策】

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。

1 当該作業を含め、丸のこ盤を使用して材料の切断等の作業を行う場合、作業の前に適切な作業方法の検討を行った上で、作業の手順、使用する機械・設備等について作業計画を定め、作業者に対して安全な作業を行うための指示を明確に行うことが必要である。

2 今回、切断に使用した丸のこ盤は木工用でありアルミ板の切断には不適切であるため、切断する材料に合った丸のこ刃を選ぶことが必要である。また、安全防止対策として、丸のこ盤には、刃の接触予防装置を設けなければならないことになっており、作業者は、これらの安全装置が取り付けてあること及び正常に機能することを確認のうえ使用することが必要である。

3 作業者に対し安全衛生教育を行うとともに、職場の定期的なパトロール等を行い安全対策が実施されているか確認することが必要である。

 

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