第2章 丸のこ等を使用する作業に関する知識①
1.作業計画の作成等
(1)作業開始前の事前打ち合わせ
①職長や現場リーダーが作成した作業予定や作業手順をTBMで確認し、十分理解を高めてから作業を始めます。※TBM(ツールボックスミーティング=作業前打合)
②その作業の中で使用する足場や脚立、可搬式作業台等についても、設置方法や使用方法、墜落防止対策を必ず確認します。
③作業に使用する丸のこの種類やのこ刃の種類についても最適な機種等を選択します。
④職長やグループリーダーは丸のこ作業従事者教育受講を確認します。
(2)作業開始前に事業所で行ったリスクアセスメントの記録を確認する
危険性または有害性についての事前調査(リスクアセスメント)は事業者責任で行うものですから、事業所で実施したリスクアセスメント記録をもとに作業場に反映できる事項を確認あるいは実行します。
【参考資料】から
「接地を繋ぎ忘れると故障した際に漏電電流で感電する」
これはシングル絶縁機器(設置が必要)の場合ですが、可能性を2点、重篤度を3点とした場合リスクの見積もり値は5でリスクレベルは4になります。
抜本的な対策というので、(例えばです)
①充電式丸のこに買い替える(可能性ゼロ)感電リスクは解決
②二重絶縁の丸のこに買い替える(可能性は1、重篤度は3リスクレベル3)
③漏電遮断器付の電光ドラムを使用+接地する(可能性3、重篤度1、同上)
リスク低減措置は「丸のこは充電式に買い変える」となり、手順書にも反映します
■すぐに全社的に充電式丸のこに買い替えが出来ない場合は、買い替える期限を定めます。(手順書等に記載)そして買い替えが終わるまでは危険予知活動で「丸のこを使う時は接地線を繋いでから電源プラグを差し込む ヨシ!」と取り上げ、合わせて指差し呼称を行いましょう。
【注意】
リスクアセスメントは本質安全化なので、器械、設備、原材料等を変えたり、それが無理な場合等は、現状に安全装置や警報器を組み込んでいきます。環境面であれば局所排気装置が有効です。人に頼る対策は最終手段か念のためとします。
⇒だから時間と費用が掛かります=事業者が行う安全管理
危険予知活動(訓練でも基本は同じ)は、職長等が中心となりその場で出来る対策を行動目標として災害防止の意識を高めていきます。
⇒その場で出来る対策=職長等が行う現場の安全管理
リスクアセスメントと危険予知活動は「危険性又は有害性の特定」と「第一ラウンド、どんな危険がありますか」は同じように考えることが出来ますが、対策が全然違うという事を忘れないでください。
※危険予知活動の2R/対策で「〇〇〇に注意する」という書き込みをよく見かけますが「注意する」は掛け声であり、安全対策ではないという事も再確認してください(具体性のないからダメなのです)
(3)ヒヤリハット報告
ヒヤリハットを体験したときは職長や会社に報告をしてください。会社はその情報を分析して必要だと判断すれば類似再発防止対策を考慮、実施します。
ヒヤリハットは「事故は起きたけど人には被害がなかった」結果です。つまり運が良かったのですが、なぜ運が良かったのかを分析することにより労働災害を防ぐヒントが見つかるかもしれません。
「〇〇だったから助かった」のであれば、日常的に〇〇な状態を保っておけば安心できるのではないかと考えていくのがヒヤリハット運動です。
(4)作業服装や保護具等
■作業服装は、作業がしやすいもので清潔感のあるものを着用しましょう。
やはり見た目は大切です。特に第三者(工事関係者以外)の目を意識しないとコンビニ等に買い物にも行けません。
①作業服は体のサイズに合ったもので、特に丸のこ作業は巻き込まれ防止のため袖じまり、裾じまりの良い物を着用しましょう。転倒災害防止の観点からも裾が長く、床や地面を引きずるようなタイプは避けたいです。
②作業服はそれ自体が保護衣なので、夏期や暑い場所でも肌を出しての作業は好ましくありません。特に肩を出したり、裾をまくるような姿は厳禁です。
③夏期や暑い場所では熱中症防止のために速乾性の素材の作業服や空調服、保冷材を利用した冷感ベストなどを使用してください。
④油やペンキの付いた作業服は発火性と健康障害(有機溶剤中毒)防止の観点から危険であり避けてください。
⑤タオル等丸のこに巻き込まれやすいものは身につけないようにしましょう。
■保護具は、それを使わないと病気や怪我をすることが分かっているから使用が義務付けられています。自分は大丈夫だからと言って保護具を使用しないと、労働災害が起こった時に休業補償等が減額されるかもしれません。
①法令では丸のこ作業を行う際に手袋の使用は禁止されてはいません。しかし、巻き込まれやすい網目のある軍手は使用厳禁です。巻き込まれにくい素材の手袋を事業所で決めて使用するようにしてください。素手は危険です。
②保護マスクは石膏ボードやサイジング系の材料等を切る際の粉じん対策として使い捨て、あるいは交換式の防じんマスクを使用します。これらの粉じんはじん肺の原因の一つになるので気を配ってください。また、古い建物の改修工事等ではアスベスト建材を使用している可能性が高く、作業にかかる前に資格者による事前調査が必要になります。
③保護メガネは、丸のこを使用する時には必ず使いましょう。飛来災害の多くは丸のこの切りくずが目に入って起きています。
④保護帽は「墜落用」「飛来落下用」「感電防止用」に分けることが出来ますが「転倒」も含め、建設業では必ず使用しましょう。
そのようなリスクがない場合は、頭髪の巻き込まれ防止で帽子を被ります。
保護帽は一般的なタイプは3年をめどに、絶縁タイプは5年をめどに交換する必要があります。
⑤騒音現場では耳栓の使用も騒音性難聴防止として必要になります。ただし耳栓を使用するとコミュニケーションに問題が発生するので事業所として相談(ルール化)しておく必要があります。(危ない!が聞こえにくいなど)
⑥墜落制止用器具は、既にフルハーネスが義務化されていますが、フルハーネスが役に立たない場合(建設業などでは5m以下)は胴ベルト型の使用も認められています。
2022年1月2日より、旧安全帯の構造規格の胴ベルトやフルハーネス、ランヤード等は使用が禁止されました。
墜落制止用器具は3年をめどに交換する必要があります。ランヤードなどは2年を目安に交換します。
※作業床を設けることが困難な箇所や物の上でフルハーネスを使用する時は特別教育の受講が義務付けられています(事業者責任)
⑦安全靴は軽作業用と普通作業用、重作業用があります。
また、踏み抜き防止機能があるタイプとないタイプがあるので作業に合ったものを選択しましょう。
先芯の入った安全靴・作業靴には、「JIS(日本産業規格)」と「JSAA(公益社団法人日本保安用品協会)」が定める2つの規格があります。それぞれ安全性と耐久性を測る試験をし、JIS合格品を[安全靴]、JSAA認定品を[プロテクティブスニーカー(プロスニーカー)]と呼んでいます。
JIS合格品とJSAA認定品との大きな違いは使用できる素材と耐久性です。
JIS合格品※は甲被が革製または総ゴム製・総高分子製(安全長靴など)に限られ、人工皮革製が多いJSAA認定品と比べ甲被の耐久性も高く、はく離抵抗の試験においても人工皮革製のJSAA認定品より高い耐久性が求められます。※JIST8101の場合
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