ヒューマンエラーとは?
建設業は、全産業の中で労働災害の発生が最も多い産業です。
死亡災害の中で圧倒的に多いのが墜落災害、次いで多いのが建設機械等による災害です。「安全帯を使用せずに墜落」、「バックしてきた重機に衝突」など、作業員のヒューマンエラーが原因の災害が多発しています。
そもそも、ヒューマンエラーとは何でしょうか。
ヒューマンエラーとは、「電話番号のボタンを押し間違えた」「パソコンのデータファイルを上書き保存せずに閉じてしまった」「自動車のアクセルとブレーキを踏み間違えた」など、人が起こすうっかり間違いのことです。思い違いや失敗によって、意図していないにも関わらず、不都合な結果をもたらす行動のことをいいます。
この言葉が日本国内で頻繁に使われるようになったのは、ある航空会社で起きたニアミス事故がきっかけだといわれています。航空局の管制官が、2機の航空機の便名を互いに逆に読み上げるエラーを犯し、2機の航空機が衝突しそうなほど異常接近したのです。事故の原因が管制官の読み間違いという人間くさい間違いであったことから、「事故原因はヒューマンエラーである」と報道されました。(参考文献※1)
このニアミス事故のように、作業員の"ちょっとした間違い"が大災害につながりかねない航空・鉄道業界では、以前からヒューマンエラー対策に精力的に取り組んできました。最近、この取り組みが建設業界にも拡がりつつあります。建設業界で、作業員のヒューマンエラーが原因と思われる労働災害が多発しているからです。
人は誰でも間違える
ヒューマンエラーに関して、興味深い報告があります。
ある研究によれば、人間が間違える確率は、電話のダイヤル回しで20回に1回、単純な繰り返し作業で100回に1回だといわれています(参考文献※2)。思いのほか高い確率ではないでしょうか。これは、人間の注意力には限界があることを示しています。どんなに注意深い慎重な人であっても、疲労や錯覚などでヒューマンエラーを起こすことがあるのです。
「人は誰でも間違える」、「人間が間違える確率はけっこう高い」という事実の理解が、ヒューマンエラー対策の出発点です。航空・鉄道業界では、この事実を前提として対策が立てられています。
全産業で労働災害が最も多い建設業界でも、「人は誰でも間違える」という事実を前向きに捉えてヒューマンエラー対策を考えることが、とても大切です。
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